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笹幸恵
2023.2.8 10:04皇統問題

倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【3】

倉山満『皇室論』。
明らかな事実誤認、支離滅裂、意味不明が多すぎる。
「えええ!? これはないでしょう」という珍説、
トンデモ論を展開している。
今回はその3回目。

皇室は「先例が掟」だと持論を展開する倉山。
そして「一度も例外なく遵守された先例」として
「皇位の男系継承」を挙げている。

いい加減、虚心坦懐に歴史を見つめよう。
元明天皇から元正天皇は女系での継承である。
だって女性の天皇から、女性の天皇に継承したんだから。
普通に考えたら、そこで終わりのはずだ。

いやいや、元明天皇の夫は草壁皇子だ。
草壁皇子のお父さんは天武天皇。
だから男系継承なのだ、と男系派は言う。
違う。
「皇位」をつないできたのは誰か?
という話だ。
草壁皇子は天皇ではない。
「皇位」は女でつないだのだ。

常識ある頭脳なら、そこで「おや?」と思うはずだ。
今の男系固執派が言うほど、当時の人々は
男系継承にこだわっていないのではないか、と。
その通り、古代は双系社会。
男か女かという性別より、熟年で指導力があるかどうかの
ほうがはるかに重要だった。
男系、父系を重視するのは大陸の影響が受けてからの話。

にもかかわらず、倉山は、歴代天皇の系図を披露しつつ
「多くの危機があったが、皇位の男系継承は守られた」などと、
それが当時の共通の約束事であったかのように書く。
歴史をねじ曲げているとしか言いようがない。


挙げ句、阿倍内親王(後の孝謙天皇)を皇太子としたのは
「聖武天皇の重大な先例違反」だとやり玉にあげている。


倉山は、いつから歴史を裁く立場になった!?

(つづく)

笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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